
技術コラム
ポンプの周辺知識クラス
【B-1c】
ポンプの洗浄(SIPとASEPTIC)
ポンプの周辺知識のクラスを受け持つ、ティーチャーサンコンです。
今回はポンプの洗浄の3回目としてSIPとASEPTIC(アセプティック)について、詳しくご説明します。
SIPとサニタリー性
SIP(Sterilizing In Place):定置滅菌

食品工場におけるすべての製品が品質的に健全であり、かつ衛生的にも安全であることは必須の条件です。これを保持する為には、その製造装置のサニタリー性がいかに確保され維持されているかが重要であり、それを全うするには洗浄と滅菌の技術に依存するほかありません。
CIPによる自動洗浄が確実におこなわれ、清浄な状態の上でSIPの自動滅菌によって衛生が保たれます。すなわち、洗浄が不良でタンパク質など腐敗物が残留している状態でSIPを実施しても一時的には菌数は低下しますが、やがては残留物が菌の温床となって増殖することになります。
「殺菌」が対象とする病原性細菌を死滅させる行為であるのに対し、
「滅菌」とは残存する全ての細菌を死滅させる無菌化の行為を指します。
滅菌の方法
滅菌の方法としては、概ね以下の方法がある
- 加熱による物理的な方法
- フィルターなどでの濾過による方法
- 放射線や紫外線などの照射による方法
- 薬品の使用による化学的な方法
機器の加熱滅菌方法として以下の情報が紹介されています。
- 加熱滅菌による「高圧蒸気滅菌法」によると、通例、資料1の何れかの条件で操作される。
- EHEDG(※)の勧告によると、清浄化された機器では120℃飽和蒸気を用いて30分間処理することで関連する微生物を除去できる。
- 芽胞形成細菌(ボツリヌス菌)は、250°F(121℃)×10分間で死滅させることができるという実験報告がある。
(芽胞形成菌とは、菌自体が生存する条件が悪くなると自ら殻を形成し、菌にとって環境条件が良くなると再び細菌として活動する種類で、耐熱性菌としてはボツリヌス菌やバチルス菌が有名)
115℃(0.07MPa) | 30分間 |
---|---|
121℃(0.1MPa) | 20分間 |
126℃(0.15MPa) | 15分間 |
その他、滅菌に関する文献などから、食品プラントメーカーではスチームによるSIPの条件として、 一般的に系内を30分間130℃(120~140℃)に保つように決めていると考えられます。但し、スチームによる滅菌は、加熱をしても機器の隅々まで行き届かない場合や凝縮水の滞留による部分的な温度低下が生じる場合があるため、加熱水による方法が採用される事も多くなります。
EHEDG( European Hygienic Equipment Design Group ):ヨーロッパの業界団体であり、EHEDGは多数のガイドラインを策定している。ガイドラインは食品機械の衛生的設計の基準や検査方法に関するものが多く、設計の良否の査定なども行っている。(https://www.ehedg.org/)
ASEPTICとサニタリー性
ASEPTIC(アセプティック):無菌性

ASEPTICの考え方は、大気に浮遊する菌が継ぎ目やシール部位からライン中に侵入する確率をゼロにするというもので、継ぎ目部位を大気圧より高くし(陽圧)、バリア効果で菌の侵入を防ぐシステムのことを指します。すなわち、製品への無菌性を保つ構造を意味するものではなく、CIP・SIPと同様に、システムを意味します。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!
本稿のまとめ

- SIPは洗浄後に設備機器内の菌を死滅させ、無菌化するシステムを指す。
- 滅菌の方法には加熱、濾過、照射など物理的な方法と、薬品の使用による化学的な方法がある。
- ASEPTIC(アセプティック)とは、インラインへ大気中の菌が侵入することを防ぐシステムを指す。
次回は、「駆動機の概要」に関して詳しく説明いたします!!
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ポンプの
基礎知識クラス
移送に関する基本情報を
わかりやすくコンパクトに
解説していきます。- 【A-1a】ポンプの種類
- 【A-1b】ポンプの種類(容積式ポンプ)
- 【A-2】ポンプの原理
- 【A-3a】軸封装置
- 【A-3b】軸封装置(メカニカルシール)
- 【A-3c】軸封装置(グランドパッキン)
- 【A-4a】NPSH(Ⅰ)
- 【A-4b】NPSH(Ⅱ)
- 【A-5】ウォーターハンマー
- 【A-6a】ポンプ選定時に確認すべき事項(1)
- 【A-6b】ポンプ選定時に確認すべき事項(2)
- 【A-6c】ポンプ選定時に確認すべき事項(3)
- 【A-7a】ポンプに使用される金属材料について
- 【A-7b】ステンレス鋼について
- 【A-7c】ステンレス鋼の腐食形態について
- 【A-7d】ポンプに使用される非鉄金属について
- 【A-8a】ポンプに使用されるゴム材料について
- 【A-8b】ゴム材料の物理的な特性
- 【A-8c】ゴム材料の化学的な特性
- 【A-9a】金属材料への表面処理
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ポンプの
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規格や周辺機器情報などを
解説していきます。- 【B-1a】ポンプの洗浄1
- 【B-1b】ポンプの洗浄2(自動洗浄における洗浄効果の因子)
- 【B-1c】ポンプの洗浄3(SIPとASEPTIC)
- 【B-2a】駆動機(駆動機の概要)
- 【B-2b】駆動機(三相交流かご形誘導モーター)
- 【B-2c】駆動機(保護方式と耐熱クラス)
- 【B-2d】駆動機(モーター技術の動向)
- 【B-2e】駆動機(変速装置・減速装置)
- 【B-2f】駆動機(番外編:周波数)
- 【B-3a】インバーターの基礎知識(Ⅰ)
- 【B-3b】インバーターの基礎知識(Ⅱ)
- 【B-3c】インバーターの基礎知識(Ⅲ)
- 【B-3d】インバーターの基礎知識(Ⅳ)
- 【B-3e】インバーターの基礎知識(Ⅴ)
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移送物の
基礎知識クラス
液の特長や性状および
主な用途などを
解説していきます。 -
IoT・AIで変わる
「送る&運ぶ」
移送・搬送の現場がIoT化、
AI(人工知能)活用で
どのように変わるのか。
伊藤元昭氏が解説します。- 第1回:産業機器のIoT化で何が変わるか
- 第2回:IoTは、日本のものづくり企業こそ活用すべき
- 第3回:AI活用の本質は、匠の技やベテランの知恵の機械化
- 第4回:AI活用を円滑・効果的に進めるための鍵は現場力にあり
- 第5回:AIの「ブラックボックス問題」との付き合い方
- 第6回:5Gで加速する工場・プラントでのIoT活用
- 第7回:ものづくりのDXで、現場の仕事はどう変わるのか?①
- 第8回:ものづくりのDXで、現場の仕事はどう変わるのか?②
- 第9回:協働ロボットで作る、人と機械が助け合う現場
- 第10回:コロナ禍で加速した、ものづくりでのAI/IoT活用
- 第11回:IoT/AIを駆使して対応する脱炭素時代のものづくり
- 第12回:製造業での脱炭素化、最初に始めたいこととは
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現場の声で、
ひとくふう
モーノポンプの使い方は現場によりさまざま。
ひとくふうを加えると、
実はおもしろい発見が!