移送物の基礎知識クラスを受け持つ、ティーチャーシローです。
今回は「流体」に関して説明していきたいと思います。
様々な流体をポンプによってパイプ移送する場合、液の粘度(粘っこさの尺度)は必須の情報です。
それは、液の粘っこさでポンプの形式や形状が変わるからです。
例えば…
渦巻きポンプ他多くのポンプが対応可能。
粘性ポンプや容積式ポンプなど。
ポンプへ流入しにくくなるので、吸込高さを高くしたり、押込装置などが必要になる場合も。
主に容積式ポンプ。ポンプに流体を押し込むための付帯設備が必要。また高圧が必要になる場合も多い。
ポンプの形式・形状の他に、配管口径、ポンプの回転速度、動力、ポンプへ押し込むのに必要な圧力等も粘っこさは影響を及ぼします。
流体の粘っこさは、その見た目や触った感触で、ドロドロ、サラサラ、堅い、軟らかいなどで表現されますが、これらの表現はどうしても個人差を生じてしまいます。この粘っこさを定量的に表現しようとする学問を「レオロジー」といいます。
定量的に取り扱うことにより全世界統一の基準で粘っこさを取り扱うことができるわけです。本講座ではポンプ移送には無くてはならない「レオロジー」の基礎知識についてお話しします。
レオロジーはポンプ移送だけにとどまらず、様々な分野で活躍しています。例えば、少し前にTVでお馴染みのドロドロ血、サラサラ血を判定する医療機械は「血液マイクロレオロジー装置」と言いますし、マヨネーズやアイスクリームといった食品の食感、化粧品の付け心地、塗料や接着剤の伸びや垂れなどいろいろな分野で活躍しています。
まずは最低限必要な用語について解説します。
ひずみを与える速度の大小を示します。単位は[1/sec]。本文では記号を「D」とします。他に「せん断速度」「速度勾配」とも言われています。トランプの束を思い浮かべてください。カードを積み重ねて、一番上のカードに手を乗せてサッと滑らせます。この時の滑らせた速度をV、積み重ねたトランプの高さをΔyとしたとき、ずり速度は
D=V/Δy
で求められます。
サッと滑らせればずり速度→大。
ソロリと滑らせればずり速度→小となります。
パイプ移送ではトランプのイメージ通り「流速大→ずり速度大」、「流速小→ずり速度小」になります。
流動させるのに必要な応力(単位面積あたりの力)を表します。単位は[Pa]。
本文では記号を「S」とします。他に「せん断応力」とも言われています。ずり応力もずり速度同様、トランプの束を思い浮かべてください。トランプの表面積をA、トランプをずらすのに必要な力をFとしたとき、ずり応力は
S=F/A
で求められます。
表面がサラサラしたトランプはほとんど力を掛けずにずれますが、もし表面が粘着質のトランプがあったら、ずらすのにはずいぶん力が要りそうです。これもイメージ通り、「サラサラ→ずり応力小」、「ドロドロ→ずり応力大」、となります。
粘度:η(イータ)はこのずり速度:D、ずり応力:Sより求めることができます。
η=S/D
単位は[mPa・s](ミリパスカルセック)です。流体の粘っこさを表す指標として広く使われています。ちなみに水の粘度は約1[mPa・s]です。なお、従来単位[cP](センチポイズ)も根強く使われています。
距離はメジャーや定規、重さは天秤やハカリを使って測るように粘度は粘度計で測ります。粘度計は高価なので、通常皆さんの目に触れる機会は少ないかと思いますが、いろんな種類があります。その一例をご紹介します。
試料中に円筒形の回転子を入れ、その回転速度とトルクから求める方式
細いノズルに試料を流し、ノズル両端の圧力差から求める方式
試料中に浸けた振動子の振幅を制御して、その振動子を動かしたときに発生する電流値から求める方法
試料中に球を落とし、その落下速度から求める方法
試料を入れたカップのオリフィスから試料を流出させ、その流出時間から求める方法
一般には構造が簡単で操作性に優れ、測定範囲が広く高精度に測定できる回転式粘度計が広く使われます。
回転式粘度計の場合、回転子の回転速度を変えながら、回転子と試料の間に発生する粘性摩擦トルクを計測していきます。回転速度はずり速度:Dに、摩擦トルクはずり応力:Sに対応しており、これを縦軸にS、横軸にDを配して計測結果をプロットし、近似曲線や直線で結んだものを「SDカーブ(流動曲線)」といいます。このグラフの形状から次回にご説明する流体の種類も把握する事ができます。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!
次回は、「流体の種類」に関して解説いたします!