ポンプの周辺知識のクラスを受け持つ、ティーチャーサンコンです。
今回は、モーターの保護方式と冷却方式、耐熱クラスについて説明します。皆さんついてきてくださいね。
日本工業規格では国際規格に対応して、「IPコード」で表示される「外被構造による保護方式」と「ICコード」で表示される「冷却方式」によって分類し、モーターを保護し安全に運転するための基準を定めています。
外被構造による保護方式 | 冷却方式 | ||
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方式の表記方法 | IPコード | ICコード | |
分類の規格 | 日本工業規格 | JIS C 4034-5 | JIS C 4034-6 |
国際規格 | IEC 60034-5 | IEC 60034-6 |
電気機器一般の外郭による保護等級(IPコード)の分類は、国際的にIEC 60529で定められています。日本では、この規格が日本工業規格(JIS C 0920)となっています。IPコードとは、IEC(国際電気標準会議)で定められたProtection(保護)の分類コードという意味です。
IPコードは、以下の2つの保護基準で構成されています。
記号 | 形式 | 説明概要 |
---|---|---|
0 | 無保護形 | 人体の接触、固形異物の侵入に対して特別の保護を施していない構造。 |
1 | 半保護形 | 人体の手のような大きい部分が誤って外被内部の回転部又は導電部に触れないようにした構造。直径50mmを超える固形異物が侵入しない構造。 |
2 | 保護形 | 指などが外被内部の回転部又は導電部に接触・接近しないようにした構造。直径12mmを超える固形異物が侵入しない構造。 |
3 | 閉鎖形 | 直径2.5mmを超える道具やワイヤーなどが外被内部の回転部又は導電部に接触・接近しないようにした構造。直径2.5mmを超える固形異物が侵入しない構造。 |
4 | 全閉形 | 直径1mmを超える道具やワイヤーなどが外被内部の回転部又は導電部に接触・接近しないようにした構造。直径1mmを超える固形異物が侵入しない構造。 |
5 | 防じん形 | いかなる物体も外被内部の回転部又は導電部に接触・接近しないようにした構造。じんあいの侵入が ない構造。 |
記号 | 形式 | 説明概要 |
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0 | 無保護形 | 水の侵入に対して特別の保護を施していない構造。 |
1 | 防滴形1 | 鉛直方向に落下する水滴によって有害な影響を受けない構造。 |
2 | 防滴形2 | 鉛直から15度以内の方向に落下する水滴によって有害な影響を受けない構造。 |
3 | 防雨形 | 鉛直から60度以内の方向に落下する散水状態の水によって有害な影響を受けない構造。 |
4 | 防まつ形 | いかなる方向からの飛まつによっても有害な影響を受けない構造。 |
5 | 防噴流形 | いかなる方向からの噴流によっても有害な影響を受けない構造。 |
6 | 防波浪形 | 波浪又はいかなる方向からの強い噴流によっても有害な影響を受けない構造。 |
7 | 防浸形 | 規定の水圧及び時間で水中に浸したとき、有害な影響を与えるだけの水が浸入しない構造。 |
8 | 水中形 | 規定の条件下の水中で連続的に運転できる構造。 |
多くの産業用機械で使用されている「全閉外扇形モーター」は「全閉防まつ形」であり、IPコードではIP44と表示されます。
モーターの冷却方式(ICコード)の分類は、国際的にIEC 60034-6で定められています。日本では、この規格が日本工業規格(JIS C 4034-6)となっています。ICコードとは、IEC(国際電気標準会議)で定められたCooling(冷却)の分類コードという意味です。
ICコードは、以下のような構成になっています。一次および二次冷媒が空気の場合と、二次冷媒の送り方が7の場合に表記を省略する簡易記号を用いることもあります。
一般的に使用されている「かご形誘導モーター」の外被方式は、防滴保護形または全閉外扇形がほとんどであり、冷却方式はそれに伴って決まります。防滴保護形の冷却方式は自由通流型(簡易記号 IC01)であり、全閉外扇形の冷却方式は外被表面冷却/自力通流型(簡易記号 IC411)となります。
全閉外扇形モーター | 防滴保護形モーター | |
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構造 | 直径1mmを超える固形異物が侵入しない構造(全閉)で、冷却の為のファンが外にある構造(外扇)です。 | 直径12mmを超える 固形異物が侵入しない 構造(保護)で、落下する水滴の影響を受けない構造(防滴)です。 |
外被構造による保護方式 | 全閉防まつ形(IP44) | 保護防滴型(IP21) |
冷却方式 | 外被表面冷却/自力通流型 (簡易記号:IC411) | 自由通流型 (簡易記号:IC01) |
モーターを含む電気製品の絶縁の耐久性は、温度・電気・機械的ストレス、振動など様々な因子により影響を受けます。中でも温度が絶縁の劣化に対して支配的であることから、絶縁の耐熱クラスが「JIS C 4003」で規定されています。一般用三相かご形誘導モーターにおける耐熱クラス(絶縁)としては、A・E・B・F・Hの5種があります。
このうち、E・B・Fの3種が標準であり、温度上昇限度が表3のとおり規定されています。周囲温度が高い場合や運転条件が過酷なときには、F・H種を採用するなど、規定に沿った耐熱クラスの選定が必要になります。
表5はJEC-2137(電気学会 電気規格調査会標準規格)に規定されているものからの抜粋で、モーターの固定子巻線部分の周囲温度(最高40℃)からの上昇限度を示したものですが、周囲温度が40℃を超える場合や標高が1000mを超える場合は、温度上昇限度の補正が必要となるので要注意です。
例えば、周囲温度が40℃を超える場合は、周囲温度から40℃を差し引いた値だけ、表の温度上昇限度を引き下げる必要があります。標高補正については細かくなるので省略します。
固定子巻線を除く鉄心とすべての構造構成物(軸受を除く)の温度上昇は、いかなる場合も、その部分の絶縁物およびその近傍の材料に有害な影響を与えてはいけません。
モーター出力/耐熱クラス | A | E | B | F | H |
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600W未満 | 60 | 75 | 85 | 110 | 130 |
600W以上200kW以下 | 60 | 75 | 80 | 105 | 125 |
温度測定法は抵抗法。Kは「ケルビン」と読み、温度の国際単位。
実際に温度上昇限度が利用される例としては以下のようなケースがあります。例えば、周囲温度が40℃でB種のモーターを実運転に使っており、モーター表面温度が100℃となったと仮定します。この場合、モーター表面の温度上昇は60Kですが、固定子巻線温度は表面より15~30K高いと考えられるので、75~90Kと推定されます。温度上昇限度を超えている恐れがあるため、F種モーターへの変更などを検討すべきと考えられます。
元々の絶縁階級は、複素数による交流理論を築いた電気工学者スタインメッツが1913年に提案したA、B、Cの3区分でした。第二次大戦中に180℃という高温に耐える「シリコーンレジン」が開発され、H種と命名されました。その後、「ポリエステル」が開発されてE種となり、更に「シリコーン」と「ポリエステル」をかけあわせた材料がF種として追加され、現状に近いものとなりました。なお、C種は誘導モーターでは適用外です。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!
次回は、モーター技術の動向について説明します。