ポンプの基礎知識のクラスを受け持つ、ティーチャー モーノベです。
前回は、「NPSH」について説明しましたが、今回は「NPSH」を利用して、具体的にポンプ選定する練習をしてみましょう!液質や使用条件によって移送可否の判断が異なってきますので、実際の判断にお役立て下さい。みなさんついてきてくださいね。
具体的に下記のようなケースについて、使用可否の判定作業をしてみましょう!
まずは前回の講義で説明した一般的なケースです。
通常は、上述の方法で判定すれば良いのですが、「液の温度が高い場合」や、「液の粘度が高い場合」には、別の要因についても考慮する必要があります。
液の温度が高い場合、液が気体(ガス)になろうとする力が無視できなくなります。その力は、一般に「蒸気圧」と言われており、たとえば、水が100℃の場合、蒸気圧は大気圧(水換算ヘッド10.3m)に等しくなり、おなじみの沸騰が起こります。参考に、水温と蒸気圧とのイメージ図を、図2に示します。このような場合のNPSHavaは、蒸気圧の分だけ減ることになります。
液の粘度が高い場合、液が吸込管内を流れにくくなり、吸込力の一部が流れ抵抗のためロスとなり、NPSHavaはその分減ることになります。流れ抵抗がどれくらいのロスになるかは、流体理論などから推定することが可能です。
液が吸込配管を上昇する間に、流れ抵抗が液換算ヘッドで、1.5mあると推定される場合。
液の粘度が高くて、高温の場合には、蒸気圧と流れ抵抗の両方を考慮する必要があります。
以上をまとめますと、一般に、NPSHavaは下記の式で求められます。なお、この式で得られる値は、前述しましたように移送液換算ヘッドであり、水換算ヘッドではないので注意が必要です。
[NPSHava]=[液面の圧力]-[蒸気圧]-[液面までの深さ]-[吸込配管内流れ抵抗](m)
前回説明しましたので復習になりますが、「ヘッド」とは、通常、MPa(メガパスカル)の単位で表わされる圧力を、液の高さで何m(メートル)に相当するかに換算して表した値で、単位は「m(メートル)」です。人間の「head=頭」とは何の関係もないですが、この分野では、日本語でやはり、「水頭(すいとう)」と言われています。
一般に、「ヘッド」は水の高さで表す場合が多いので、このように「水頭」と言われますが、下記のように、液の密度により「ヘッド」は異なりますので、注意が必要です。たとえば、大気圧(空気の力)は、通常は、次のような関係になります(水とエタノールは密度が異なるため)。
0.101(MPa)=[水換算ヘッド]10.3(m)=[エタノール換算ヘッド]12.9(m)
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!
ポンプの吸込性能を判定する際には、以上の点に注意しましょう!!