ポンプの基礎知識のクラスを受け持つ、ティーチャー モーノベです。
今回はゴム材料の化学的な特性について学びたいと思います。
ゴム製品を液体に触れた状態で長く使っていると、硬くなったり、軟らかくなったり、べとついたり、膨らんだりしませんか。また大気中でも長期間経過すると、表面にひびが入ったり、硬くなったりすると思います。今回は、こうした亀裂や膨潤について説明します。
亀裂の一因としては、酸素やオゾン、紫外線が考えられます。ゴム材料の主成分であるポリマーの分子鎖が切断されるためで、亀裂だけでなく、硬化してしまうことがあります。
これらの現象に対する耐性は、ゴムの分子構造によって左右され、一般的にポリマー主鎖に不飽和構造(二重結合)を持つものは弱く、飽和構造を持つものは強くなっています。
膨潤について説明する前に、まずはゴムの構造についてお話しします。ゴム材料は網目構造になっており、網目が交差している点を架橋点といい、網目自体は自由に動くことができますが、架橋点によって拘束されています。この網目と架橋点によって、伸びたり縮んだりするゴムとしての特性が生まれます。
液体はゴム材料と接すると、この網目構造の中に侵入しようとします。なかには、容易に侵入して網目を広げてしまう液体もあります。このように網目が広がることを膨潤と言いますが、膨潤するかどうかはゴム材料と液体との相性に依ります。
ゴム材料が膨潤するかどうかの判定方法としては、直接的な試験方法と間接的な推定方法があります。
直接的な試験方法としては『浸せき試験』による評価です。これは、該当するゴム材料のテストピースを試験液に一定期間(通常は1週間程度)浸し、テストピースの硬度・質量・体積・外観状態の変化を評価する方法です。ゴムを液体に浸せきさせるため、精度の高い判断ができますが、試験期間が長いという問題があります。
一方、間接的な推定評価としてSP値という材料指標を用いた方法があります。SP値とは、Solubility Parameterの略で溶解度パラメーターと呼ばれているものです。この値は計算で求められる材料固有の数値であり、SP値が近いもの同士は溶解しやすい性質があります。つまり、ゴム材料や液体それぞれに決まったSP値があり、それらの値が近ければゴムが膨潤しやすい組み合わせと推定することができます。ただし、SP値は一つの目安であって、実際には一致しない場合もありますので、注意が必要です。
ゴム材料をポンプに使用する場合には、使用環境や移送液を考慮し、正しく選定することが重要です。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!