ポンプの基礎知識のクラスを受け持つ、ティーチャー モーノベです。
ポンプの構成材料については、金属、ゴム、樹脂など、様々な材料がありますが、今回は、ポンプに使用される金属材料について学びたいと思います。
当然のことながら、様々な工場や生産現場で使用されるポンプは、所要の性能で異常なく安定して運転されることが必要です。しかし、性能どおりの運転が継続されていても、わずかな運転時間で損傷しては困ります。扱う液に対して、間違った材料を選定してしまうと、腐食や摩耗といった現象が起こり、極端に寿命を縮めることになりかねないため、材料選定は非常に重要となってきます。
金属材料を選定する上で重要な要素としては、以下が挙げられます。
その中でも、特に重要視されるのが、耐腐食性や耐摩耗性であり、使用液・使用条件に合わせて『腐食が起きにくい金属』や『摩耗に強い金属』などを使い分ける必要があります。
金属材料の選定はポンプの寿命を決定する要素のひとつであり、液質に合わせた材料の選定が非常に重要です。また、そのポンプが使用される場面での重要性、安全性、さらには、経済性についても考慮した上で総合的に決定することが必要です。
一般的なポンプで使われる代表的な金属材料を紹介します。
ポンプではケーシングの材料として広く使用されています。
鋳鉄とは鋳物の一種で、型に鉄を流し込み成型するものです。複雑な形状の型であっても隅々まで鉄を行き渡らせるために意図的に炭素含有量を多くしています(炭素含有量が多いと融点が低くなり、溶けやすくなります)。
また、一度型を作ってしまえば簡単に量産することができるため、コスト面においても優れています。FC200といった標記をしますが、この時の数字は材料の引張強さ(N/mm2)を表しており、FC200は、最低引張強さが200N/mm2のねずみ鋳鉄を示します。
鋼塊を種々のロールにかけて、鋼板、形鋼、平鋼、棒鋼などに圧延したもので、広い範囲で構造物の製作に使用されている極めてポピュラーな鋼材です。
引張強さを基準とした炭素鋼で、良く使用されるSS400の400は、最低引張強さ400N/mm2を示します。炭素量の少ない鋼材で焼きが入らないため硬くすることはできませんが、非常に加工しやすいので、機械加工部品の材料としてよく利用されます。
炭素の含有量が指定されている炭素鋼です。ある程度の強度を必要とする機械の部品・部材を中心に幅広く使われる材料で、通常は熱処理により、強度、硬度を上げて使用されます。
一般的なポンプでは回転軸やギヤなどに用いられます。S**Cと標記し「**」に入る数値で炭素の比率を表し、S45Cの場合は0.45%の炭素を含むことになります。
炭素工具鋼は特殊鋼の一種で、S-C材よりも炭素量が高く、硬さと耐摩耗性に優れ、金属加工に用いられる刃物や治具、金型の材料となります。
SK材は工具鋼のなかでも使用頻度の高い鋼材で、S-C材と同様、熱処理により、強度、硬度を上げて使用されます。ポンプにおいても、耐摩耗性が必要な箇所に使用されます。
通称ダイス鋼と呼ばれ、SK材にタングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)などを添加した鋼材です。常温での耐摩耗性に特に優れ、一般的に金型や工具素材として用いられます。モーノポンプでは、ステーターと摺動するローターにSKD11を使うことがあります。
青銅は、CuとSn(すず)の合金です。鋳造しやすく、一定の耐食性、耐摩耗性があり、十円玉にも使用されています。ポンプにおいても羽根車、ケーシングで使用されることがあります。
ステンレス鋼とは“stain・less”と書き、すなわち“汚れや錆びがほとんど無い”という意味の鋼材です。錆びにくくする為に、クロムやニッケルを含ませた合金鋼で、炭素の含有量が全重量の1.2%以下で、クロムの含有量が全重量の10.5%以上のものを言います。
非常に耐食性に優れた材料であり、腐食性の高い液の場合に選定されます。しかし、他の一般の鋼材と比較すると、価格は高価になってしまいます。
含有成分により様々な種類がありますので、ステンレス鋼の分類や耐食仕組みなどの詳細は次号にて紹介したいと思います。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!
次回は、上記「SUS材(ステンレス鋼)」について、さらに掘り下げて説明する予定です!