
技術コラム
ポンプの基礎知識クラス
【A-6b】
ポンプ選定時に確認すべき事項(2)
ポンプの基礎知識のクラスを受け持つ、ティーチャー モーノベです。
今回は、ポンプ選定時の大きなファクターである液の性状について学びたいと思います。
流体の種類と性状
扱う流体の性状もポンプ選定の重要なファクターです。前回の講義で説明したそれぞれの水頭に影響する粘度、温度などの数値や、材質選定に関わる流体の化学的特性を知る必要があります。
1:流体名
移送する流体の名称から、性状に関するある程度の情報が把握できるため、流体名は必要な情報です。
2:温度
流体の温度は吸い上げ能力に大きく影響します。温度が高い場合は有効吸込ヘッド(NPSHava)を算出する上で、流体の飽和蒸気圧の確認が必要です。また温度により流体の粘度は変化します。
- 【参照ページ】
- 流体の飽和蒸気圧に関する注意事項については、下記を参照下さい。
-
- 【A-4b】NPSH(Ⅱ)
3:密度
一般的にカタログでは常温の清水での性能が表示されることが多いですが、その場合の密度は1,000kg/m3となります。同じ揚程でも密度によってNPSHavaや吐出圧力が変わるため、ポンプの選定や駆動機の選定に必要です。例えば密度1,200kg/m3の流体を移送するとすれば、清水の1.2倍の重さですから押し上げるための動力は1.2倍になりますし、受ける圧力も1.2倍になります。
- 【密度って?】
- 密度は、単位体積あたりの質量である。厳密には、ある量(物理量など)が、空間(3次元)あるいは面上(2次元)、線上(1次元)に分布していたとして、これら空間、面、線の微小部分上に存在する当該量と、それぞれ対応する体積、面積、長さに対する比のことを言い、それぞれ、体積密度、面密度、線密度と言う。
4:濃度・粘度
液は水状の液から、ネバネバ、ドロドロ、パサパサなど様々な液性状があります。液体中の成分濃度が変化すると、それによって密度や粘度が変化します。そのため上で述べたとおり動力や、管路損失水頭の変化により圧力も変化します。また硫酸などの薬品ではその濃度により、使用できる金属材料が異なっています。
- 【参照ページ】
- ニュートン性物質・非ニュートン性物質・ずり速度については、下記を参照下さい。
-
- 【C-2a】流体って何?
- 【C-2b】流体って何?(流体の種類)
5:その他注意事項
- 移送液の危険性・爆発性
- 液によっては液自体が危険なもの、気化したガスが危険なもの、そのガスに引火爆発性があるものなどがあります。漏れたら危険な液では軸シール構造のないポンプを選定する必要があります。爆発性のある液では、接液部に金属接触がない構造が必要ですし、駆動機も防爆型を使用しなければなりません。
- 固形分やスラリー含有液
- 砂などを含む汚泥や硬い金属粒子を含むスラリー液では、接液部品に耐摩耗性の高い材料を使用する必要があります。また大きな固形物を含む液では、それが通過できる構造のポンプである必要があります。また沈降分離性の有無についても確認が必要です。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!
本稿のまとめ

- ポンプの性能を決めるために、液の温度、密度、粘度、濃度などの条件が必要であること。
- ポンプの材質を選定するために、液名、濃度が必要であること。
- 液の危険性や成分などの情報も、ポンプや駆動機の仕様を決めるために確認が必要であること。
次回は、性能曲線の見方や性能面からのポンプの選定法、駆動機の動力について講義する予定です。
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ポンプの
基礎知識クラス
移送に関する基本情報を
わかりやすくコンパクトに
解説していきます。- 【A-1a】ポンプの種類
- 【A-1b】ポンプの種類(容積式ポンプ)
- 【A-2】ポンプの原理
- 【A-3a】軸封装置
- 【A-3b】軸封装置(メカニカルシール)
- 【A-3c】軸封装置(グランドパッキン)
- 【A-4a】NPSH(Ⅰ)
- 【A-4b】NPSH(Ⅱ)
- 【A-5】ウォーターハンマー
- 【A-6a】ポンプ選定時に確認すべき事項(1)
- 【A-6b】ポンプ選定時に確認すべき事項(2)
- 【A-6c】ポンプ選定時に確認すべき事項(3)
- 【A-7a】ポンプに使用される金属材料について
- 【A-7b】ステンレス鋼について
- 【A-7c】ステンレス鋼の腐食形態について
- 【A-7d】ポンプに使用される非鉄金属について
- 【A-8a】ポンプに使用されるゴム材料について
- 【A-8b】ゴム材料の物理的な特性
- 【A-8c】ゴム材料の化学的な特性
- 【A-9a】金属材料への表面処理
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ポンプの
周辺知識クラス
規格や周辺機器情報などを
解説していきます。- 【B-1a】ポンプの洗浄1
- 【B-1b】ポンプの洗浄2(自動洗浄における洗浄効果の因子)
- 【B-1c】ポンプの洗浄3(SIPとASEPTIC)
- 【B-2a】駆動機(駆動機の概要)
- 【B-2b】駆動機(三相交流かご形誘導モーター)
- 【B-2c】駆動機(保護方式と耐熱クラス)
- 【B-2d】駆動機(モーター技術の動向)
- 【B-2e】駆動機(変速装置・減速装置)
- 【B-2f】駆動機(番外編:周波数)
- 【B-3a】インバーターの基礎知識(Ⅰ)
- 【B-3b】インバーターの基礎知識(Ⅱ)
- 【B-3c】インバーターの基礎知識(Ⅲ)
- 【B-3d】インバーターの基礎知識(Ⅳ)
- 【B-3e】インバーターの基礎知識(Ⅴ)
- 【B-3f】インバーターの基礎知識(Ⅵ)
- 【B-4】防爆
- 【B-5】管材と計測器
- 【B-6】トップランナーモーター
- 【B-7】マグネットカップリング
-
移送物の
基礎知識クラス
液の特長や性状および
主な用途などを
解説していきます。 -
IoT・AIで変わる
「送る&運ぶ」
移送・搬送の現場がIoT化、
AI(人工知能)活用で
どのように変わるのか。
伊藤元昭氏が解説します。- 第1回:産業機器のIoT化で何が変わるか
- 第2回:IoTは、日本のものづくり企業こそ活用すべき
- 第3回:AI活用の本質は、匠の技やベテランの知恵の機械化
- 第4回:AI活用を円滑・効果的に進めるための鍵は現場力にあり
- 第5回:AIの「ブラックボックス問題」との付き合い方
- 第6回:5Gで加速する工場・プラントでのIoT活用
- 第7回:ものづくりのDXで、現場の仕事はどう変わるのか?①
- 第8回:ものづくりのDXで、現場の仕事はどう変わるのか?②
- 第9回:協働ロボットで作る、人と機械が助け合う現場
- 第10回:コロナ禍で加速した、ものづくりでのAI/IoT活用
- 第11回:IoT/AIを駆使して対応する脱炭素時代のものづくり
- 第12回:製造業での脱炭素化、最初に始めたいこととは
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現場の声で、
ひとくふう
モーノポンプの使い方は現場によりさまざま。
ひとくふうを加えると、
実はおもしろい発見が!