ポンプの基礎知識のクラスを受け持つ、ティーチャー モーノベです。
今回は金属材料への表面処理について学びたいと思います。
ポンプに用いる材料は、強度などの機械的な性質、耐食性などの化学的な性質、必要な形状や寸法にするための加工性などから、使用環境や使用条件に適しているものを選定します。さらに、「基材」となるこれら材料は、熱処理や表面処理を行うことで、強度や耐久性をさらに高めたり、新たな機能や特性を付加することができます。
今回は、金属材料の表面に皮膜として形成させる一般的な表面処理の種類や特性と、そのなかでも代表的な工業用クロムめっきについて解説します。
めっきは主に以下の3つがあります。
溶融状態にした溶射材料(金属やセラミックスなどの粒子)を基材表面に高速で吹き付けて積層させる皮膜です。溶融する熱源や方式、溶射材料の特性によって、防食性、肉盛り性、耐摩耗性、耐熱性などさまざまな機能をもつ皮膜を形成できます。
金属や酸化物などを蒸発させ、基材の表面に付着させたり薄膜を形成させたりします。真空蒸着やイオンプレーティング、スパッタリングなどの物理的反応を利用した物理蒸着法(PVD)と、化学的反応を利用した化学蒸着法(CVD)とがあります。
基材の表面を塗料の皮膜(塗膜層)で覆います。装飾や防錆・防食、表面保護など、用途や目的によって塗料の種類や塗装工程、塗装方法(刷毛塗り、吹き付け、焼き付け、電着、粉体塗装など)が異なります。
上記のような表面処理は、耐久性および精度的な信頼性や品質の向上、省エネ、再生補修によるランニングコストの低減などの特性を基材に付与し、多様な分野で用いられます。基材にもたらす効果によって、用途や目的に合った表面処理が選定されます。では、表面処理の効果にはどのようなものがあるか見てみましょう。
特性 | 基材にもたらす効果 |
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耐摩耗性 | 皮膜が硬いほど耐擦傷性があり、さらに摩耗係数が低ければ摩耗に強くなる |
滑り性 | 摩耗係数を低くし、滑りやすくする |
潤滑性 | 摩耗係数を低くする。皮膜表面に保油性を有するものなどもある |
耐食性 | 湿気や塩分、硫化雰囲気などによる錆や腐食を防ぐ |
耐候性 | 屋外で使用する場合、紫外線劣化などの変質を起こしにくくする |
耐熱性 | 高温下での硬度、耐摩耗性、耐食性などの物性低下を生じにくくする |
離型性 | 表面に粘着や焼き付きを起こさない性質で、成型加工では型離れを良くする |
撥水性 | 水を弾きやすくする |
導電性 | 電気を伝わりやすくする |
絶縁性 | 電気抵抗の大きい皮膜により、電気を通しにくくする |
装飾性 | 色調や光沢、模様などの組み合わせで表面の多様化、高級化を図る |
また、表面処理は下記のような特性でも使い分けられます。
寸法精度 | 精密部品や電子部品などでは、均一な膜厚が求められる |
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肉盛り性 | 寸法補正や耐摩耗性の向上を図る場合、十分な膜厚の確保が必要になる |
二次加工性 | 表面処理後の機械加工などのしやすさ |
ここまでは、表面処理の概要をお話ししてきました。ここからは、表面処理のなかでも代表的な、工業用クロムめっきの処理工程や特性をご紹介します。工業用クロムめっきは前述した電気めっきの一つです。基材をCr(クロム)溶液中に入れ、通電することで皮膜を形成します。では、工業用クロムめっきの処理工程を見てみましょう。
このように処理される工業用クロムめっきには下記の特長があり、機械部品の摺動部などで耐摩耗性を要する場合によく採用されています。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!
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