ポンプの基礎知識のクラスを受け持つ、ティーチャー モーノベです。
今回は、「ウォーターハンマー」について学びたいと思います。
家庭の台所などにあるレバー式の水道栓を急に閉めると「コン!」と音がすると思います。これが最も身近なウォーターハンマー(水撃現象)です。本講義は上下水道や工場などの水配管系において発生するウォーターハンマーについて解説します。
「流速の急激な変化により管内圧力が過渡的に上昇または下降する現象」をウォーターハンマーといいます。まずは原理を簡単に説明しましょう。
配管内を定常に流れる水を思い浮かべてください。スムーズに流れ、圧力変動もなく穏やかです。この状態で配管末端のバルブを閉め、流れを急激に止めてしまうとどうなるでしょうか?定常に流れていた水が行き場を失い、閉まったバルブで圧力上昇が発生することは想像に難くありません。これは満員電車が急停車し、立っている人が次々に前の方に倒れかかる様子に似ています。
この状態を工学的に言うと、流れの運動エネルギーが行き場を失って、圧力エネルギーに変換されると考えられます。逆にバルブを急激に開いて開放する場合は圧力降下を生じます。このような圧力変動は配管や流体の上流・下流へ瞬間的に伝わっていきます。この速さを「圧力伝播速度」といい、10℃の水ならば1,425m/sという超高速で圧力変動が伝わっていきます。
このような圧力変動により次の2種類のウォーターハンマーが引き起こされます。
ウォーターハンマーによる圧力変動によって次のような問題が発生します。
以上の通り、ウォーターハンマーは管路において大問題を引き起こす厄介者です。
特に問題が大きくなりやすい水柱分離の対策例を以下に示します。対策のポイントは原因の逆で「流速の急激な変化を防止する」ことです。
事前にウォーターハンマーが発生するかどうかが分かれば、事故を事前に防止できます。ここでは下水道での検討方法を簡単にご紹介します。正確には特性曲線法などの計算により水撃解析する方法が取られますが、ポンプを含む管路では「パーマキアン線図」を用いた簡易検討が良く用いられます。
パーマキアン線図による検討では、計算される最低圧力と管路縦断高さから算出される「最大負圧」を求めます。最大負圧は配管内部の圧力を示しています。農林水産省のガイドラインでは最大負圧は-7m以上(配管口径500mm以下)となるように対策を講じる必要があるとされています。
縦軸は配管の底部高さ[m]と、最低圧力[m]を表します。横軸は配管の距離[m]を表します。図3の管路(紫線)は地上に設置されたポンプから、地下へ-26m下に潜り、階段状に地上に上がっており、総延長は5,500mもあります。
ポンプ運転時の圧力が緑色の線であるのに対し、ポンプが急停止すると圧力変動が生じ、最低で黒色の線(最低圧力線)のところまで圧力降下が発生します。最低圧力が管路縦断(紫線)を下回るところに負圧を発生し、約3,500m地点で最大負圧-19mとなり、上記のガイドライン=-7m以下となるためNGです。そこで、ポンプに200kg弱のフライホイールを付加し、再度最低圧力線を求めたところ、最大負圧は同3,500m地点で-4m程度に抑えられたため水柱分離が発生しない結果となりました。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!
今回は、ウォーターハンマーとその防止策について説明しました。ポイントとしては、
配管距離が200~300m以上のときは、事前にウォーターハンマーの発生有無を検討することをお勧めします。