移送物の基礎知識クラスを受け持つ、ティーチャーシローです。
今回は「流体の種類」に関して説明していきたいと思います。
前回のおさらいをしますと、一般的な粘度計では、ずり速度:Dを複数変えながら、ずり応力:Sを計測します。この結果をグラフ上にプロットしたものがSDカーブです。粘度は、「ずり応力÷ずり速度」にて算出できますので、グラフの縦軸に粘度:η、横軸にずり速度をプロットしたグラフ(ηDカーブ)を描くこともあり、SDカーブ&ηDカーブの形状によって流体の種類が定義されています。まず大きくは以下の2つの流体に区分できます。
ηDカーブが水平に一直線、即ちずり速度により粘度が変わらない流体があります。この流体を「ニュートン流体」と言います。SDカーブに書き直すと原点を通る直線となります。
【例:水、シリコーンオイルなど】
一方、日常的に目に触れる流体(例:マヨネーズ、マーガリン、生クリームなど)や工業的に使われる流体の大半は、ニュートン流体でない「非ニュートン流体」に該当します。非ニュートン流体はずり速度により粘度が異なる特徴があります。よって非ニュートン流体は、粘度の数値を扱うよりは、SDカーブの形状で区分したほうが分かりやすいですね。
さらに非ニュートン流体にはいろんな種類がありますが、今回は代表的な「擬塑性流体」「ビンガム流体」「ダイラタント流体」について説明します。
皆さんの机にあるボールペンの芯を取り出して見てください。芯を逆さにしてもインキは垂れてきませんよね?でも紙にボールを押し当てて滑らしてみると、さらさら字が書けますよね?これを整理すると…
・芯の中(流動小)…ドロッとして垂れない→粘度大
・ボールを動かす(流動大)…インキが流れてさらさらかける→粘度小
●ずり速度小→粘度大
●ずり速度大→粘度小
の関係を持つ流体を「擬塑性流体」といいます。
トイレの垂れにくい洗浄液は典型例です。ノズルから噴出するときは粘度が低くないと押し出しが大変です。一方、便器に付着したときはさらっと流れてしまうと洗剤が残らないので、ドロッとして垂れにくい性質が必要です。
【例:塗料、濃縮ジュース、マヨネーズなど】
突然ですが、今朝歯磨きをしてこられましたか?ペースト状の歯磨き粉を使われる方も多いと思います。フタをあけ、チューブを指で押し出して、歯ブラシにペーストを塗りつける…と言うことは、ペーストは指で押さないと出てきません。
このようにある程度の力を加えないと流動しない流体を「ビンガム流体」と言います。SDカーブで見ると切片のある一次関数となります。この切片を「降伏値」と言い、この降伏値以下であれば流動しない、降伏値を超えると流動を始める、となります。
【例:ケチャップ、塗料など】
擬塑性流体とは反対にずり速度が大きいほど、ずり応力が大きくなる流体を「ダイラタント流体」と言います。例を挙げると、生クリームを作るときにかき混ぜるとだんだんと粘りが出てきますね。
かき混ぜる→流動大→粘りが出る→粘度大
流動を与えると粘度が大きくなるわけですから、ポンプ移送にとって厄介な流体であることは想像に難くありませんね。
【例:ミルクチョコレート、波打ち際の砂など】
粘度計で測定したものから流体の種類をどのように特定するか?例を挙げて説明します。粘度計で測定した結果は、縦軸:ずり応力、横軸:ずり速度においたグラフ上にプロットしていきます。これを近似曲線や直線で結び、上記の各種SDカーブを参照に類推するわけです。
図はトマトケチャップを計測した例ですが、赤い近似曲線では擬塑性流体らしいことが分かります。しかしながら、ずり速度40[1/s]以上の領域では青い点線でも近似でき、これなら切片が67[Pa]のビンガム流体とも見ることができます。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!
次回は、「流体と配管抵抗」に関して解説いたします!