移送物の基礎知識クラスを受け持つ、ティーチャーシローです。
今回は、浄水工程でよく使用される薬液についてご紹介します。
水の豊富な我が国ですが、池や川の水は汚れや化学物質などを含んでおり、そのまま飲むことはできません。そのため浄水場では、飲み水として定められた基準値を満たすまで、さまざまな薬液を使って有害な成分を取り除き、各家庭に配水しています。普段何気なく使っている水道水も、実は厳しい規格に適合した高品質な製品。浄水場は、言わば大規模な食品工場なのです。では実際にどんな薬液が使われているのか見てみましょう。
次亜塩素酸ナトリウムは淡黄色の透明な液体で、水道用には有効塩素濃度が12%以上、低食塩タイプのものがよく使用されます。非常に不安定な性質で、自己分解を抑制するために苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が添加されるため、pH12以上の強アルカリ性となります。水に注入し中性域に近づくと次亜塩素酸の存在割合が増し、強い殺菌効果を発揮します。
塩素の強い酸化力により、原水中に含まれる鉄、マンガンを酸化させ取り除きやすくします。
次亜塩素酸などの有効塩素により、ウイルスや病原性細菌を死滅させます。
衛生的な水を家庭に届けるため、配水時に添加します(水道法にて給水栓で遊離残留塩素濃度0.1mg/L以上であることが義務付けられています)。
温度環境など保存状態次第で、自己分解により酸素と塩化ナトリウムを生成しやすい液体であり、配管ルートによってはガス抜き管などの設置が必要な場合があります。
苛性ソーダには液体と固体があり、水道用には液体でNaOH(水酸化ナトリウム)濃度48%、25%、20%のものがよく使用されています。強アルカリ性で無色透明です。
注入してpH調整することで、凝集剤がその効果を十分に発揮できるようにします。また、配水時に水道管の腐食防止のために添加する場合もあります。
ポリ塩化アルミニウムは、水道用にはAl2O3(酸化アルミニウム)濃度10~11%のものがよく使用されます。酸性でpH3.5~5、無色~黄味がかった薄い褐色の透明な液体です。
プランクトン、藻類、不溶性の有機物、地質に由来する懸濁成分などは、水中で互いにマイナスの電荷を持ち反発して浮遊しています。PACはその中に注入されると加水分解してプラスの電荷を持ち、浮遊物同士の反発をなくして凝集させ、大きな塊(フロック)を生成して沈殿させます。同用途の硫酸ばんどより適用pH域が広いため、近年では凝集剤としてよく使用されています。
反応性が高いため結晶化しやすく、環境によっては機器や配管内部の定期的な清掃が必要です。
硫酸アルミニウムは、水道用にはAl2O3(酸化アルミニウム)濃度8%のものがよく使用されます。酸性でpH3~4、無色~極めて薄い黄味がかった透明な液体です。
PAC同様、水中の浮遊成分を凝集させ沈殿させます。
ポリシリカ鉄は、鉄とシリカを主成分とした凝集剤の一種です。酸性でpH2~3、黄褐色で透明な液体です。
PAC同様、水中の浮遊成分を凝集させ沈殿させます。また、成分中にアルミニウムを含まないため、凝集後の汚泥は農地還元に利用しやすい特徴があります。
硫酸は、水道用としては濃度75~98%のものがよく使用されます。強酸性の無色又はわずかに着色した粘り気のある吸湿性液体です。
pH調整のために添加します。
硫酸に水を加えると急激に多量の熱を発生し、飛散を伴うこともあり非常に危険です。
以上、どれも水道水の品質を保つためには不可欠なものですが、非常に腐食性が高く危険な薬液ばかりです。浄水工程で使われる注入設備は、これらの危険な薬液が外に漏れない構造になっていたり、耐食性に優れた材質が使われていたりと、特別な仕様で作られています。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!