技術コラムB教室ポンプの周辺知識クラス

【B-3d】
インバーターの基礎知識(Ⅳ)

ポンプの周辺知識のクラスを受け持つ、ティーチャーサンコンです。
インバーターが有する問題点の主なものとして「高調波」と「ノイズ」がありますが、今回は高調波について説明します。皆さんついてきてくださいね。

1.高調波とは

高調波とは、基本波(※1)の2倍以上の整数倍(※2)の周波数を持つ波の総称です。

1 基本波とは一般には商用電源の周波数50Hzまたは60Hzの波のことです。

2 一般的には40倍程度までで、40倍であれば40次と表記します。

高調波はインバーターやインバーターを使ったエアコン等から発生し電源の電圧波形を歪ませ、最悪の場合、同一電源に接続されている「力率改善用コンデンサー」や「トランス」を焼損させる他に、パソコン等のダウンや蛍光灯のちらつき等の障害の原因となります。

従って、高調波を抑制するために「高調波抑制対策ガイドライン」が定められています。インバーターは5次以上の奇数次の高調波を発生しますが、25次程度までの高調波が特に問題とされています。基本波、高調波、ひずみ波の関係の一例を下図に示します。

図1 基本波、高調波、ひずみ波の関係の一例

2. 高調波が発生する原因

インバーターでは周波数や電圧を自在に変化させるための前処理として、交流を直流に変換することが必要であり、そのために「コンバータ回路」が内蔵されています。この回路は「整流回路」とも呼ばれ、一方向にのみ電流を流す半導体の動作によって直流電圧を作り出します。

高調波は交流を直流に変換するこの「コンバータ回路」で発生します。

図2をご覧ください。この「コンバータ回路」の3相の半導体に、それぞれAのような正弦波形の電圧がかかった時、この半導体の電流を流す・流さないという動作によって、Bのような高い周波数(高調波)を含む歪んだ波形の電流が発生し、それが電源側に流れることにより悪影響を及ぼします。

図2 高調波の発生

3.高調波を抑制する対策

高調波抑制は商用電源の品質を維持するためであり、特定需要家(※)において使用されるインバーターはすべて「特定需要家の高調波抑制対策ガイドライン」の適用対象となっているので、それに沿った対策が必要です。

特定需要家とはガイドラインの適用対象となる高圧(交流では600Vを超え7000V以下の電圧)、または特別高圧(7000Vを超える電圧)で受電する需要家のことで、ほとんどの工場、事務所ビルが該当します。

インバーターの割合が低い場合には高調波抑制対策が不要な場合も多いのですが、特に多数のインバーターを設置する場合や、既にインバーター駆動の割合が高い場合等は、実際に高調波抑制対策を採る必要性が高くなるので、メーカーに相談する等、事前に余裕を持って検討することが大切です。

「交流(AC)リアクトル」や「直流(DC)リアクトル」の使用

高調波を低減する最も安価で簡便な方法は、通常「交流リアクトル」や「直流リアクトル」を使用する方法です。図3のように「交流リアクトル」や「直流リアクトル」をインバーターに接続します。例えば交流リアクトル付とすることで流れる電流の波形は(a)から(b)のようになります。直流リアクトルを付けると更に高調波を抑制する効果はありますが、高調波の発生をなくすことはできません。従って、上記の対策では、ガイドラインの上限値を超過してしまう場合も考えられます。

図3 リアクトル接続と波形の例

「高力率コンバータ」等の使用

高力率コンバータとはインバーターの出力回路を逆にして入力回路としたようなもので、インバーターから発生する高調波電流を大幅に低減する装置で、PWMコンバータとも呼ばれます。高力率コンバータに接続されたインバーターから流出する高調波電流はないものとして扱うことができます。

そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!

本稿のまとめ

  • インバーターは高調波の発生源になり、周辺の設備や機器に影響を及ぼす可能性があるので、設置上の留意が必要であり、場合によっては対策が必要となること。
  • 高調波対策は「高調波抑制対策ガイドライン」に沿って考える必要があり、対策は、必要の有無も含め、事前に余裕をもって検討する必要があること。

次回は、インバーターの問題点のひとつである「ノイズ」と、その対策についてご説明します。

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