
技術コラム
ポンプの周辺知識クラス
【B-2f】
駆動機(番外編:周波数)
ポンプの周辺知識のクラスを受け持つ、ティーチャーサンコンです。
今回は駆動機の講義の番外編として、周波数に関してご説明します。
商用電源の周波数は、何故50Hzと60Hzになったか?
周波数が現在のようになったのは、電気がどのように利用され発展してきたのかということに深いつながりがあります。電気の供給をめぐっては、発明王エジソンも巻き込んだ、有名な交直送電論争というものがありました。送電を交流でやるのか直流でやるのかというもので、ちなみにエジソンは直流派でしたが、送電コスト等の問題から交流に軍配があがりました。

交流が使われ始めた初期(1880年頃)には色々な周波数が使われ、高い方は133Hzから低い方は25Hzまで8種類程度ありました。電灯だけなら、ちらつきを減らす為、出来るだけ高いほうが良いので133Hzが使われていたのですが、誘導電動機や変圧器が実用化されてくると高い周波数では製作が困難になってきました。また、遠方に送電するには周波数が出来るだけ低い方がロスが少なく有利だったので送電に関しては25Hzが使われてきました。
その頃、アメリカでは発電機に高速タービンが実用化され、その周波数が60Hzであったことから、中間的な60Hzが主流となりました。
一方、ヨーロッパでは、イギリスは各地によって周波数がバラバラで混沌としていましたが、ドイツがいち早く50Hzを基準の周波数と決めました。ドイツでは比較的低速の発電機が多く使用されており、133Hzへの対応が困難であったこと、又25Hzなどの低い周波数に対応する回転変流機も未だ広く普及していなかったことから、基準の周波数を決めやすかったようです。その後にイギリスでも50Hzが基準と決められました。こうした経緯を経て現在では、ヨーロッパを中心としてアフリカ、アジアは主に50Hzが使われ、アメリカ、カナダ、メキシコなどでは60Hzが使われています。
日本の周波数が、50Hz地区と60Hz地区がある理由
明治20年(1887年)、日本で初めて火力発電による電気供給が行われた時、その電気は直流でした。しかし、変圧の容易な交流のほうが有利と考えられるようになり、明治22年には大阪電灯会社が交流配電による電力供給を開始。その2年後には東京電灯会社も交流配電を導入するようになりました。

では、当時の交流の周波数がどうであったかというと、50Hz、60Hz、125Hz、133Hzなど、地域や発電所によってまちまちでした。しかし、電灯をつける程度の用途では大したトラブルもなく済んでいました。ところが、工場など動力用の機械に使用するとなると話は別で、交流モーターは周波数の違いが機械の回転速度に現れてしまいます。
おりしも、明治20年代の後半は日本の産業の発展期。電力会社も周波数の統一を考えざるを得なくなりました。こうして明治28年(1895年)、東京電灯はドイツから50Hzの交流発電機を購入。以後、東日本は50Hzで統一されます。一方、大阪電灯はアメリカから60Hzの発電機を購入、西日本一帯は60Hzに。これがそのまま現在の周波数分布となったというわけです。
現在では、周波数切替スイッチがついた電気製品も多くありますが、インバーターの利用により商用電源の周波数とは無関係に使用できるもの(いわゆるヘルツフリー)も増えてきています。
周波数が50Hzと60Hzになった歴史、おわかりいただけたでしょうか?
では、また近いうちに学び舎にてお会いしましょう!
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