ヘイシン モーノポンプ

技術コラムIoT・AIIoT・AIで変わる
「送る&運ぶ」

さまざまな産業において始まりつつある、IoT化、AI(人工知能)活用。
移送・搬送の現場への影響や技術トレンドについて、電子・機械系雑誌のジャーナリストであるエンライト代表:伊藤元昭氏がわかりやすく解説します。

第1回 産業機器のIoT化で何が変わるのか

モノのインターネット(Internet of Things:IoT)という技術が、新聞、雑誌、テレビなどで頻繁に紹介されるようになりました。IoTとは、身の回りのあらゆるモノ、例えば冷蔵庫やクルマ、体重計、時計などをインターネットにつないでしまおうとする技術です。このIoTを産業機器に活用しようとする動きが世界中で広がっています。一体、産業機器をIoT化することで何が起こるのでしょうか。その意義と移送・搬送に与える影響を紹介したいと思います。


すでに、多くの工場で製造装置や産業用ロボット、移送・搬送装置などが産業用ネットワークを介してつながり、動いています。そして、個々の装置の動きをつぶさに管理することで、ファクトリーオートメーション(FA)が実現しています。いまさら産業機器をインターネットにつなげても、あまり代わり映えがしないのではと思えます。ところが実際には、大違いなのです。

インターネットにつなぐということは、工場内の装置や設備の稼働データを工場外に持ち出すということです。多くの場合、そのデータは大手グローバルIT企業が運営するデータセンターに蓄積されます。データセンターには高性能なコンピュータがずらりと並んでおり、そこでは人工知能を活用した解析ができます。すると、工場内だけでは実施できなかった高度な解析が可能になり、蓄積したデータから非常に有益な情報を抽出できるようになるのです。

産業機器のIoT化と「予知保全」

産業機器のIoT化が最初に起きたのは、火力発電所などで活用されるタービンだと言われています。発電所のような重要な社会インフラが突然の故障を起こしてしまうと、そこから修理用の部品を発注し、入手して修理するまでの間、電力供給がストップしてしまいます。故障の発生の兆候を正確に予知するためには、非常に高度な解析を行う必要がありました。そこで、インターネット経由でタービンの稼働データをデータセンターに伝送したのです。その結果、タービンの微妙な振動、温度などの変化を常に監視し、普段と違った挙動を示したら、それを解析して故障する前にその予兆を察知し、未然に対策を施せるようになりました。

その効果は絶大でした。従来は、発電所のストップを避けるために、発生時期を想定し、相当な余裕を見て計画的に部品を交換し、無駄にコストを費やしていました。それが、壊れる兆候を察知できれば、直前に修理できるようになります。故障を予知して保守する手法は、「予知保全」と呼ばれています。同じ効果は、発電所以外の社会インフラや工場設備などでも期待できます。もちろん、工場内でモノを運ぶ移送・搬送装置も同様です。このように、現在の産業機器のIoT化は、まず予知保全の実現を目指して広がっています。

そして、IoT化による予知保全は、副次的にベテラン社員の技術継承の問題にも光明をもたらします。長年携わっている熟練者の中には、毎日扱っている設備の稼働音を聞いて、予知保全と同様に異常を察知できる人もいます。しかし、日本の製造業の現場では人手不足が深刻化し、こうした高度な技能を持つベテラン技術者の後進が育っていないところが多くあります。マニュアル化された定期点検さえ徹底できないところがあるのです。そこで、生産設備をIoT化し、その企業の日本全国、ひいては世界各国の生産設備のデータを統合できれば、かつて個々の工場でベテラン社員だけが持っていた知恵や技を全社で共有できるようになります。このようにIoT化による予知保全は、多くのメリットを生産現場にもたらすのです。

ITシステムを活用し、商品を作り分ける時代へ

ここまでIoT化と予知保全について紹介してきましたが、実はその先の「第4次産業革命(Industry4.0)」と呼ばれる大きなインパクトを及ぼす動きが、世界中で広がってきています。2011年にドイツがスマートファクトリーの実現を目指す国家政策「Industry4.0」を発表して以降、欧米を中心とする各国も国を挙げてのIoT活用に取り組みはじめ、第4次産業革命の大きな動きに変わってきました。

製品が製造されてから消費者に届くまでのさまざまな工程でIoT化が進んでいる

さらにIoTやAIに関する技術が進歩すれば、大量生産を行う工場でも消費者一人ひとりが望む仕様の製品を個別に作り分けることさえできるようになるでしょう。例えば、個人の詳細な体型データや、さらには色やデザイン、素材の好みに応じ、衣料品を細かく作り分けるサービスがすでに生まれています。さらに同様のことが、食品、化粧品、薬品、自動車、家電製品などで実現できるかもしれません。こうした、ITシステムを活用した効率的で効果的な商品の作り分けは、「マスカスタマイゼーション」と呼ばれ、Industry4.0での実現目標の一つです。

まとめ

こうした潮流を念頭に置くと、工場やインフラで使われる移送・搬送装置には、送るモノ、送る量、送る先を自在に変えられる高い柔軟性が求められるようになるでしょう。すでに物流拠点のコンベアを撤去して代わりに移送ロボットを採用するケースなどが出てきていることから見ても、移送・搬送現場におけるIoT化の本格的な波はもう間近に迫っているのです。

PROFILE
伊藤 元昭氏
株式会社 エンライト 代表
技術者として3年間の半導体開発、日経マイクロデバイスや日経エレクトロニクス、日経BP半導体リサーチなどの記者・デスク・編集長として12年間のジャーナリスト活動、コンサルタントとして6年間のメーカー事業支援活動などを経て、2014年に独立して株式会社 エンライトを設立。

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