ポンプの周辺知識のクラスを受け持つ、ティーチャーサンコンです。
今回は、前回の続きでインバーターの基本制御方式とインバーター駆動におけるモーター特性についてご説明します。皆さんついてきてくださいね。
モーターの特性は、モーターの種別(インバーター専用モーターか、汎用モーターか)やインバーターの基本制御方式(Vf制御か、センサレスベクトル制御か)によって異なります。インバーター専用モーターはインバーター駆動専用にモーターのコイルの絶縁が強化されたモーターであり、その中でもインバーター専用定トルクモーターはその名のとおり、一般的に6~60Hzの範囲で定格トルクで連続運転性能が保証されたモーターです。
一方、汎用モーターは一般的に商用電源駆動での一定速運転用です。200V級の汎用モーターはインバーターでの駆動も可能ですが、そのトルク特性(定トルクか、低減トルクか)はインバーターの制御方式によって異なります。
400V級の汎用モーターは一般に絶縁上の問題からインバーター駆動が不可ですので注意が必要です。広い変速を必要とする負荷の場合、インバーター駆動では少数の例外を除いてインバーター専用定トルクモーターが使用され、商用電源駆動では汎用モーター(一般に三定格、例えば200V級の場合、200V/50Hz、200V/60Hz、220V/60Hz)が使用されることが一般的です。
【B-2d】駆動機(モーター技術の動向)でも少し触れましたが、インバーターの基本制御方式としては「Vf制御」と「ベクトル制御」に大別され、ベクトル制御には「センサレスベクトル制御」と「センサー付きベクトル制御」の2つの制御方法があります。「センサー付きベクトル制御」は速度検出センサー付きを前提とした制御方式ですが、高価かつ一般的ではないので、ここでは説明を省略し、「Vf制御」と「センサレスベクトル制御」についてのみを比較します。
「Vf制御」(図6参照)は、インバーターが世の中に出現した当初から存在する「周波数」と「電圧」を同時に制御する古典的な制御方式で、下記にあげるようなトルク特性上の特徴があります。
「センサレスベクトル制御」(図7参照)は、マイクロプロセッサーの処理速度向上等のハードウェアの進歩により、「Vf制御」のトルク特性上の諸問題を改善すべく出てきた制御方式で下記のような特性があります。
モーターは、商用電源駆動では、50Hz又は60Hzの周波数とその時の電圧に対して定格トルクで連続運転が可能なように設計されています。一方インバーター駆動では様々な周波数で運転されますが、一般的には60Hzが定格周波数として設計されており、基底(ベース)周波数とも呼ばれています。
基底周波数を越える領域で使用する場合、インバーターは120Hzまで一般的に問題ありませんが、モーターはモーター容量によって最高周波数が変わる場合があることに注意が必要です。さらに、電圧は変わらず定出力に近い特性となるので、上図(図6、図7の出力周波数が60~120Hzの範囲)のようにモーターの発生トルクは周波数が大きくなるに従って低減することから、負荷トルクが一定であってもモータートルクが不足する恐れがあり注意が必要です。
商用電源の直入れでは、モーターに加える電圧と周波数が大きい為、大きな始動トルク、すなわち定格トルクの200~300%程度が得られますが、始動電流も大きく定格電流の600~800%程度となります。
一方、インバーター駆動では周波数と電圧は0から徐々に上がりモーターに加えられるので、始動トルクは定格の100~200%程度と小さくなりますが、始動電流も100~200%程度と小さくなることから、ブレーカの容量を下げられる可能性があります。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!
次回は、インバーターが、省エネに優れている点、豊富なアプリケーション制御が可能な点について説明します。