軸封から液漏れする

「液漏れ」は目視で確認できますが、液漏れの発生を予測することは極めて困難です。液漏れすれば、液質によりますが、不衛生、異臭の発生などにもつながり、清掃作業も必要となります。今回は「液漏れ」が発生した場合に対応できるよう、液漏れが発生しやすい部位とその原因、液漏れが発生した場合の対策を整理してお伝えします。

液漏れの約80%は軸封部で起きる

ポンプからの液漏れが発生する部位は、軸封部が全体の約80%を占めますので、今回は軸封からの液漏れに絞ってその原因と対策を整理します。

軸封部の断面図

液漏れの原因

軸封部からの液漏れ原因を整理するとおおよそ下記のようになります。液漏れはその状態を外観から確認できますが、その原因の特定は分解しなければ困難です。

また、液漏れの原因がヒートクラック(発熱による破損)の場合は、メカニカルシールの破片が移送液に混入する危険性があり要注意です。ヒートクラックの原因であるドライ運転は厳禁です。

発生部位 発生部位詳細 考えられる原因
軸封部 メカニカルシール 摺動部の摩耗・損傷
Oリングの劣化
ドライ運転によるヒートクラック
ドライブシャフトの摩耗
メカニカルシールでは対応できない液性状
オイルシールからの漏れ
バリシール リップ部の摩耗進行
ドライブシャフトの摩耗
バリシールでは対応できない液性状

液漏れに対する対策

液漏れの発生を事前に予測することは困難です。つまり昔の歌ではありませんが液漏れは「ある日、突然」起きてしまう現象です。起きてしまった液漏れに対しての対策は、下記表に整理していますが、事前に、使用する液性状を考慮し

  1. 空気に触れると固化する液、摩耗性の高い液などは特に液性状にあった軸封部を選定する
  2. 液性状によって材質の劣化が進行しやすい場合は、液性状にあった材質を選定する

などを実施することで、劣化の進行を防ぐ、液漏れの発生を未然防止できる可能性もあります。また、異物の噛み込みや軸振れの確認など日常の点検でも液漏れを未然防止できる可能性があります。

メカニカルシールの場合

考えられる原因 対策
摺動部の摩耗・損傷 摩耗や傷があれば漏れが発生します。メカニカルシールを新品に交換する必要があります。
※メカニカルシールの寿命が短い場合は弊社までご相談ください。
Oリングの劣化 経年的なゴム劣化、液性状による劣化が考えられます。新品に交換する必要があります。
ドライ運転によるヒートクラック メカニカルシール部分のエアー溜まりやし渣の巻き付きがないかの確認が必要です。
ドライブシャフトの摩耗 Oリングと接触している部分が摩耗している可能性があります。ご確認ください。
メカニカルシールでは対応できない液性状 大気に触れると固化する液など、メカニカルシールでは対応できない可能性もあります。このような場合、別方式の軸封に変更する必要がありますので、弊社までご相談ください。
オイルシールからの漏れ オイルシールの交換が必要です。
※オイルシールの寿命が短い場合は弊社までご相談ください。

バリシールの場合

考えられる原因 対策
リップ部の摩耗進行 リップ部分の摺動により摩耗が進行している可能性があります。バリシールを新品に交換する必要があります。
※リップの寿命が短い場合は弊社までご相談ください。
ドライブシャフトの摩耗 リップ部分の摺動により摩耗が進行している可能性があります。ドライブシャフトの交換が必要です。
バリシールでは対応できない液性状 摩耗性の高い液や大気に触れると固化する液など、バリシールでは対応できない可能性もあります。このような場合、別方式の軸封に変更する必要がありますので、弊社までご相談ください。

液漏れ放置が引き起こすデメリット

激しい液漏れではなく、気にならない程度の液漏れの場合、放置されることがあります。当座は問題がなくても、大きなトラブルを誘因する可能性があります。不具合が大きくなればなるほど、運転休止やメンテンスコストの増大などにつながる可能性が高くなりますので、初期段階での対応が大切です。

漏れ量が増大する

メカニカルシール

メカニカルシールからの漏れは摺動面から漏れるケースが殆どです。主に面開きや摩耗が原因となります。摺動面に固化した液が付着することで面が開きますので、その固化した液が成長することで更に面が開き、漏れ量が増大することがあります。また、摺動面の摩耗が原因の場合は、摩耗が進行することで漏れ量が増大していきます。

バリシール、オイルシール

バリシールやオイルシールはリップによりシールされています。異物の噛み込み等でリップ部分が摩耗すると液漏れが発生します。リップ部の摩耗や劣化が進行すると漏れ量も増大することになります。

グランドパッキン

グランドパッキンは多少漏れながら使用することになりますが、やはりシャフトと摺動している部分は摩耗が進行しますので、放置していると漏れ量が増大します。

異臭

移送液やグリース、オイル類が大気側に漏れると異臭が発生することがあります。環境問題に発展する可能性もありますので注意が必要です。

腐食

漏れ出てきた液が滞留することで、液に接している部分が腐食したり塗装が剥がれるケースがあります。漏れ量が増大すると腐食や塗装剥がれの範囲が拡大します。

固化

漏れ出てきた液が固化するケースがあります。固化が進行することで分解不能になったり、メンテナンスに影響を及ぼす可能性があります。

液漏れを放置しておくと、運転休止やメンテナンスコストの増大につながる可能性があります。液漏れ発生時の初期段階での対応と日常の点検を実施していただきますようお願いいたします。

ページトップへ